モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
誕生日の贈り物―姫乃
「…。」
凍夜の寝室で、姫乃は
昨日読み終わったはずの
本を無言で眺めている
ベットの上の凍夜を見つめた。
機嫌が悪い時に部屋で
二人きりになると、
凍夜は必ず読み終えた本を
開いてじっと眺めはじめる。
凍夜は一度読んだ本の内容は
ほとんど丸暗記しているから、
同じ本を読み返すことは
まずないため、姫乃は
割と早くに彼のこのクセに
気付いた。
姫乃と、目を合わせ
ない為の、手段。
今は話しかけられたく
ないとか、苛立ちを
落ち着かせようとか、
そういう理由があって
開いているだけで、
中身を読んではいないのだ。
その証拠に、凍夜が
本を開いてからだいぶ
時間がすぎているのに、
いまだにページが
めくられていない。