モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
男は、女の行動に何の抵抗も見せず、
視点の定まらない目で女を見ていた。
「…さようなら、ファノラム。」
引き金を、引く。
発砲音と共に、女の手が
男の胸を押した。
高い高い、塔の上から、
男はまるで羽毛のように
ゆっくりと落ちていく。
そうして、かつて最愛の夫だった
モノを自らの手で屠った女は、
隣室に隠れていた愛しい我が子と、
腹の中に宿った新しい命を
抱きしめながら、
悲しみに暮れて泣き崩れた。