モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
夕食を済ませてから、
凍夜は姫乃と一度も
視線を合わせてくれない。
気に入らないことがあると、
だいたいいつもこうなって
しまうから、さすがに
この空気にはなれたものだが。
「…どうしたら、機嫌を
直してくれるの?」
いつものように、
姫乃が尋ねれば、
凍夜は一瞬こちらの様子を
窺うように、眺めていた
本から視線を移した。
こうなるときは、だいたい
姫乃が凍夜の目の
届かないところで
何かしでかした場合が
ほとんどで、謝って
お仕置きされれば
翌日にはいつもどおりに戻る。
でも、今回はちょっと、
事情がちがう。