モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

姫乃を抱き寄せる
凍夜の胸元に、
そっと頭をあずける。

姫乃の栗色のくせっ毛を
優しく撫でる手の動きが、
とても気持ちよかった。

「…。…髪を…。」

「何…?」

「毎日、髪を梳いて
もらうのは、ダメかしら。」

上流階級では令嬢が
侍女にさせることだから、
貴族である凍夜には
抵抗があるだろうか。

「…亡くなった父が、
よく母にしていたの。
わたしもしてほしいって
頼んだけど、お母様に
それだけは譲れないって
怒られたことを思い出して…。」

「どうして。」

「お父様はお母様の
旦那様だから、姫乃も
自分だけの旦那様に
やってもらいなさいって。
お母様にやきもち
やかせないでちょうだいって、
言われたわ。」

「ふぅん。…それで、
キミは僕にやってほしいの。」

「え?ええ。
…凍夜が嫌じゃなければ、
ぜひ…。」

そう言いかけて、
姫乃はハッとした。


凍夜の目が。

からかいの色で満ちていることに気付く。

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