モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
姫乃の栗色の髪は、
とても柔らかい上に
クセがある。
髪を傷めないように
梳かすのに凍夜がいつも
使っているブラシは
使いづらそうだ。
「ノークス様なら、
使いやすいものをお持ちでは?
持っていなくても
詳しいのではないでしょうか。」
「冗談じゃない。」
確かに身だしなみにうるさい
弟ならそういうものに
詳しいかもしれないが、
滅多にない姫乃のおねだりに
弟を頼るなど論外だ。
「…ここを、片づけておいて。
今日は姫乃の部屋で休む。」
しばらくは姫乃がいつも
使っているブラシを
使うことを思いついて、
凍夜はさっさと
自分の部屋を後にした。
回廊に出て目を閉じ、
姫乃の残り香を探す。