モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

微かに香る、甘酸っぱい
香りが鼻をくすぐった。

飲み続ければ身体から
甘い香りが漂うと
いわれている、
隣国チェーニの
高級茶ベリー・シャムの
香りだ。

幼いころから
ベリー・シャムを
愛飲している姫乃は、
いつも誘うような
甘酸っぱい香りを
纏っている。


目を開けて歩きだす。

残り香を辿れば、
すぐに姫乃の部屋の
前に辿りついた。

「…入るよ。」

ノックはせず、
一言だけ告げて
返事も待たずに入る。

「…。」

彼女の部屋の中は乱雑に
本や編み棒が置かれた
机をのぞけば、
いつも綺麗に片付いている。

そんな部屋の中を横切り、
隣の寝室に入って
すぐに違和感に気付く。

ベットの上にあるべき
ものがない。

無言のまま、凍夜は
ベットの下を覗き込んだ。

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