モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

穏やかに眠る彼女の顔を
見つめながら、
柔らかな頬に手を添えて
軽く撫でれば、
姫乃は小さく微笑んだ。

そんな寝顔が可愛くて
たまらないから、
思わず彼女の頬を
指先でつまんでしまう。

そのまま様子を見ていると、
最初は何の反応も
なかった姫乃の顔は
しだいに痛そうに
眉をしかめ始めた。

小さくうなって、
顔についているものを
とろうと手を動かす。

さすがにこれ以上は
起こしてしまうだろうと
指の力を抜くのと同時に、
姫乃の手が凍夜の手を
捕まえた。

微かに押し上げられた
まぶたの奥の、
深い海を思わせる
紺碧の瞳が凍夜の姿を
捉える。

「…。…もう…
いたずらばかり、して…。
…放さない、から…。」

凍夜の手をつかんだまま、
寝ぼけているらしい
姫乃は再び目を閉じた。

どうやら、朝まで
放してくれないらしい。

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