モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
「望むところだよ。」
そう囁いて姫乃を
引き寄せ、ほとんど
身動きが取れないように
抱きすくめた。
翌朝の姫乃の反応が
楽しみだ。
腕の中でベリー・シャムの
芳しい香りがより
強く香ると、まどろみ
はじめた凍夜の脳裏に
これまで幾度となく
よぎった疑問が
浮かびあがった。
隣国では王族以外には
手に入れることが
非常に困難と言われる、
ベリー・シャム。
もちろん、他国になど
ほとんど出回ることがない。
それを幼いころから
愛飲しているという姫乃。
彼女の母親の為に、
父親が手に入れたという話を、
以前、聞いたことがあるが、
それは並大抵のことではない。
姫乃の父親は、一体
どういう素性の
人物だったのか。