モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
「…その話は初めて
聞きましたね。」
「…。あ。」
ちらりと、沙羅は
気まずげに姫乃を見た。
リリのことを人に
言ってはいけないと
言われていたのに。
「…別に、かまわないわよ。
朔夜は誰かに
言いふらすようなことも
ないでしょうし。
…凍夜以外には。」
「おや、言うなと
言われれば凍夜に
だって言いませんよ。」
「それは無理でしょ。」
「言いませんよ。」
「無理よ、あなた
ブラコンだもの。
凍夜の機嫌を取るためなら
絶対言うわね。」
「誰がブラコンですか。
仮にそうだとしても、
重度のシスコンの
あなたに侮られる
いわれはありませんよ。」
「失礼ね、別にそこまで
酷くないわ。
ちゃんと標準の範囲よ。」
「あ、あの、それでね、
お姉さま。リリのことで
ちょっと聞きたいことが
あったの。」
口ゲンカを始めそうな
二人を遮って、沙羅は
慌てて自分の用件を
会話に押し込んだ。