モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

「え、ええ。どうかしたの?」
「…あのね…リリのお母様、
もしかして、具合、
また悪くなったの?」

「どうして?」

「リリ、今回のお手紙で一度も
お母様のこと書いてなかったの。
だから、書きたくないほど、
よくないのかなって…。」

リリからの手紙は、
いつもリリの母親が姫乃に
あてた手紙と一緒に届くから、
姫乃なら何か知っ
ているのではないだろうか。

「…そうね。あまり
よくないそうよ。
…だから、手紙のお返事は、
しばらく控えましょうね。」

「え。でも、お返事、
待ってますって…。」

「リリの家はいろいろ
複雑なのよ。今出しても、
忙しくて読めないだろうし…
この微妙な時期に
一手間違えたら分が悪く…。」

そこまで言いかけて、
姫乃は突然黙りこんでしまった。

ちらりと、その視線が朔夜を探る。

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