モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

「…言うなと言われれば、
凍夜にだって言わないと
言ったでしょう。」

「…あてにはしないけど、
そうしてくれると嬉しいわ。」

姫乃の意味深な視線を
受けて答えた朔夜が、
僅かに窘めるように
言葉を続ける。

「凍夜に隠しごとを
するのは、正直如何な
ものかと思いますがね。」

「…別に、隠してる
わけじゃないわ…。」

「キミは凍夜の花嫁ですから、
僕はあまりとやかく
言うつもりはありませんよ。
凍夜の逆鱗に触れる
ことのないよう、
気をつけることですね。」

日々、甘やかしている分、
反動は酷いでしょうから、と
付け足して、朔夜は
紅茶を一口すする。

「…。…そうだわ、沙羅。」

「え、はい、お姉さま。」

「午後、わたしの部屋に
来てくれる?ちょっと、
見てほしいものがあるの。」

無理やり話題をかえる姫乃に、
もっといろいろ聞きたいのを
こらえて沙羅はうなずいた。


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