モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
おさがりのドレス―姫乃
「っっ!!かわいいっ!
…これ、お姉さまが
作ってくれたの…?」
「わたしのおさがりよ。
あなたの好みとサイズに
合うように少し
手を加えたけど。」
キラキラと目を輝かせる妹に、
姫乃は満足気な笑みを浮かべた。
沙羅が自身の身体に
あてがってくるくると
回ってみせているのは、
姫乃が昔着ていた
ラベンダー色を基調とした
普段使いのドレスだ。
「朔夜が用意してくれる服は
白かピンクが多いから
たまにはいいかと思って。」
ラベンダーのような
薄紫色は、沙羅の
一番好きな色だ。
沙羅はあまり自分の好みを
主張する子ではないから、
おそらく朔夜はそれを
知らないだろう。
姫乃がこうやってさりげなく
着せてやれば、沙羅のことを
よく見ている朔夜なら、
様子の違いで好みにも
気付いてくれるはず。
朔夜はけっこう
面倒なところがあるから、
姫乃はよく、妹の好みに
関してはこういう
気の使い方をしている。
自身のセンスの良さを
自負している彼は、
姫乃に衣服や装飾のことで
口を出されるのを嫌うのだ。