モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
言葉を濁した姫乃に、
沙羅は珍しく不満げな
目で姉を見つめた。
「…お姉さま…このごろ、
隠しごとばっかり…。」
そんな呟きがはっきりと
聞こえたが、姫乃は
あえて聞こえない
ふりをした。
「そうだわ…。
忘れるところだった。
沙羅、あとでお使いに
いってくれないかしら。」
素知らぬ顔で、話題を変える。
つい数時間前のリリからの
手紙の話でも、
無理に話題を変えられたことに
気付いているはずだが、
沙羅は不満げな視線だけを
そのまま残して、
姫乃を問い詰める
ようなことはしなかった。