モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

迷いと決意―姫乃


心底不満げな視線を
残して部屋から
出ていく沙羅を
見送ると、姫乃は
力が抜けたように
窓際の椅子に
腰を落とした。

「…。」

俯いて、深く深く
ため息をつく。

「…どうしたら…。」


…どうしたら、
いいのだろう。


沙羅が、姫乃を
あんな目で見るなど、
今まで一度もなかった。

沙羅には、姫乃と森で
暮らし始める前の
幼い頃の記憶が
ほとんどない。

そんな状態で、ずっと
姫乃と二人で生きてきた。

だから、沙羅はこれまで、
姫乃の言うことに
逆らうことも
疑うこともなく、
姫乃に全幅の信頼を
置いてきたのに。


なのに、この数年で、
沙羅はどんどん、
変わってしまった。
< 80 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop