モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
弱さ故に、きっと
凍夜に言ってしまう。
―全部捨てて
逃げ出したい―と。
姫乃が望めば、
どこまでも姫乃に
甘い凍夜は、
それをかなえてくれる。
だけど、そうなれば
姫乃は一生、自分も
凍夜も許すことが
できなくなってしまう。
残された時間は
少ないのに、
自分の弱さが、
邪魔をする。
「…。言わなくちゃ…。」
その時が来てからでは、
姫乃は逃げ出したいと
望む自分の弱さに
勝つことができなくなる。
僅かでも、姫乃の心に
猶予があるうちに、
凍夜に告げなければ。
「…今晩…。」
今晩、凍夜の食事が、
終わった後。
せめて、すべてを
打ち明けておかなければ。
そう心に決めて、
姫乃は堅く、目を閉じた。