モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

誕生日の贈り物―沙羅


軽く、部屋のドアをたたくと、
いそいそと顔をだした
黎明が一瞬引っ込んで、
またすぐ顔をだした。

「どうぞ、お嬢様。」

そう言われて、
部屋に通される。

少し薄暗い照明に
照らされた室内は
照明に溶け込むような
落ち着いた色合いの
インテリアでまとめられ、
いつ訪れても居心地がいい。

室内を見回して、
部屋の主がいないことに
気付いて出なおそうとする
沙羅に、声がかかった。

「座っていてかまいませんよ。
すぐにそちらに行きますから。」

部屋の主である朔夜の声は、
ドローイングルームから
聞こえた。

どうやら着替えている
途中だったらしい。

…やっぱり、出なおした方が
いいかしら。

そう考えている間に
手早く身支度を整えて
でてきた朔夜の姿を、
沙羅は思わず食い入るように
見つめてしまった。

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