モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
「こんな格好で、
申し訳ありません。」
着替えどころか、
入浴中だったのだろう。
いつも隙のないくらい
きちんしている
普段の朔夜とは全然違う。
薄手のシャツを
羽織っている程度の
簡易な上半身に、
まだだいぶ湿り気を
帯びている降ろされた
黒く長い髪。
すれ違いざまに香るのは、
日中つけている
コロンではなく、
部屋で焚いている
アロマキャンドルの
移り香だ。
薄暗い部屋の雰囲気と、
とろりと溶け込む
ようなアロマの香り。
そしてそれに馴染んだ
普段よりずっと
艶っぽい朔夜の姿に、
沙羅はかるいめまいを
おぼえた。
「おや。めずらしい色の
服を着ていますね。
どうしたのです?」
朔夜の問いかけが
沙羅の耳に入ったが、
答えるのも忘れて、
沙羅は朔夜を見つめる。