モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

「沙羅、せっかくだから、
こっちのケーキも食べていく?
まだ、ノークスさん、
迎えにはこないよね。」

ノークス、というのは、
朔夜のもう一つの名前だ。

彼は通常、ノークスという
名前を使っているが、
沙羅たちだけには、
親に与えられた
朔夜、という名前を
呼ばせている。

「うん、食べる。
何のケーキ?」

「グーズベリー。
じゃあ、別のお茶いれるよ。」

穏やかに笑う店主の
名前は、アルカ。

彼は少し前に他界した
両親の後を継いで、
双子の兄と2人でこのお店と
裏の酒場を切り盛りしている。

彼らの父親は、小さい村に
食料や生活物資を届ける
仕事もしていたから、
昔はよく兄弟そろって
父親の配達の手伝いの
合間に沙羅と遊んでくれた。

以前、村はずれの森の
一軒家に姉の姫乃と
二人きりで住んでいた
沙羅にとっては
数少ない友人だった。

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