モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

沙羅の手の中で
輝くのは、
花を飾る小さな宝石。

まるで雫のような
その輝きは、
花の花弁を
濡らしているように
魅せる。

それは、小さな
花弁の花を
モチーフに作られた、
ブローチだった。

繊細に編み込まれて
つくられた色
とりどりの花に、
ところどころに
あしらわれた
小粒の宝石。

「…。ライラック…?」

花や葉の形に
見覚えがあって、
首をかしげながら
つぶやく。

その形は、ライラックの
花によく似ているのに、
少しだけ、違う
ような気がする。

「ええ、そうですよ。
ただ、普通の花とは
違って、これは
花弁が五枚ある。」

通常四枚の
ライラックだが、
五枚の花弁のものを
見つけると幸せに
なれると言われて
いるらしい。

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