【完】泣き顔スマイル




友達の乃愛ちゃんにこのことを話したとき『チャンスじゃん!』と彼女は言った。


誰もいない家に男女が二人きり。

ラブはそこら中に転がっている。


そう見えるかもしれないけど

幼馴染ってもうある意味
兄妹と変わりないと思うの。



「マル、そこで寝んなら家帰って寝な」


丸井モモ(まるいもも)だから、マル。

未だにそう呼ぶのなんて
もうしゅーちゃんくらいだ。


「んー、もちょっと」


薄っすらそんなことを考えながら
瞼をぎゅーっと寄せる。眠い…。


「ダメ」


そんな言葉と共にお風呂上がりのいい匂いが、私の重い瞼を開けさせる。


私を見下ろす修ちゃんの
頭にはタオルが一枚。


無造作な前髪から
覗く瞳と目が合った。



「しゅーちゃん」

「はい起きて。起きろ」



呼び声はスルーされ

無理やり両腕を引っ張られる。



ちえー。


目を擦りながら立ち上がり

フラフラと玄関へ向かう。


「しゅーちゃん、おやすみ」

「おやすみ」


私ね、修ちゃんの名前を呼ぶときと、修ちゃんに『おかえり』って声かける時と

あとね『おやすみ』って
言うときがいちばんスキ。







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