【完】泣き顔スマイル
第七章* ちょっと昔の話。
「お邪魔しまーっす」
「どーぞー」
風邪で早退した数日後
ご丁寧にもプリントを持った
乃愛ちゃんが家にやってきた。
乃愛ちゃんは慣れた足取りでリビングに入ると、お気に入りのクッションに座る。
「はい、これ」
そんな彼女にココアを差し出す。
万が一のことを考え
マスクをしての対応。
「ありがとう。
どう、カラダの調子は?」
「うん、もう微熱程度だよ。
あ、てか乃愛ちゃんあの日
修ちゃんのバイト先行ったでしょ」
「うんっ。
やー、超絶カッコよかった!
しかもあたしのこと
覚えてて『さっちゃん』だって!」
そういえば
そう呼んでた気がするような。
『さっちゃん』とは
乃愛ちゃんの苗字の
佐竹(さたけ)からきている。
ぐいっ、とココアを
一気に飲み干しテーブルに置く。