Dear.My Heart
…それからすぐにお父さんは亡くなった。
“死”という言葉が理解出来なくて、あたしはずっと自分を責めた。


――「柚菜がもっといい子にならなかったから。
だからお父さんはいなくなっちゃったんだ。」――





お母さんは「違うよ」って言いながら、何度も何度もあたしの頭を撫でた。


一番辛いのは自分なのに、お母さんはあたしたちの前で泣かなかった。
その時は気付かなかったけど、それが母の精一杯の強がりだったんだ。






あの海が何処なのか、母に聞くことさえ出来ないでいる。

もう一度行きたい。
あたしは今でもそう思っている。







いや…、

あたしは覚えていないわけじゃないんだ。

心にそっと蓋を閉じただけ。

覚えてないなんて言ったら、お父さんが可哀想だよね…


自分自身、思い出すのを恐れているだけなんだ。



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