Dear.My Heart
どのくらい走っただろう。
見慣れた町並みを通り過ぎ、柚菜は隣町まで来ていた。




この町で、柚菜の名は知れわたっていた。
振り返って見る人も少なくはない。





“香山大輝が裏にいる”という理由で。




大輝はここで何度も喧嘩した。
察にもお世話になってたし、病院送りにしたこともあった。



もちろんあたしは見てるだけ。
そう、あの時さえも…
彼の痛みや悲しみを、ひたすら傍観者として見ているだけだった。

いや、見ていることしか出来なかったのだろう。





< 9 / 178 >

この作品をシェア

pagetop