Dear.My Heart
静まりかえった病室に柚菜の啜り声だけが響いている。








「柚菜、好きだよ…俺と付き合ってくれる?」




耳元で囁く優しい声を聞き、柚菜は顔を赤らめた。




いきなりの告白に戸惑いを隠せない柚菜をよそに、稔はそっとおでこにキスをした。






「…はい」


柚菜は腕を背中に回し、ギュッと抱きしめかえした。







あたしはすごく遠回りをした。
遠回りをした分だけ、得るものは大きかったんだ。



切なくて、愛しくて、苦しくて、嬉しくて…
これ以上の恋はないと思っていた。


その時はまだ、顔を出したばかりの芽に水を注がれただけだったから。


< 95 / 178 >

この作品をシェア

pagetop