それまでの高校生活は、本当に野球ばかりだった。


授業も半分は寝ていて、いつもテストは赤点ギリギリ。


「次のテスト平均なかったら、大会出場認めないぞ」


数学教師に言われたのは、十月の考査前だった。


「まじやべぇわ…清水数学教えてくれぇ〜」


部のなかでは頭のいいほうの清水に頼み込む。


「俺、数学苦手」


「嘘だろ?誰かぁ…」


頼みの綱もきれ、当てがなくなる。


類は友を呼ぶ。


まさにその通りで、俺の周りに頭のいい奴はいなかった。


「…あ」


思いついたように清水が言う。


俺は目線を清水に移す。


「あいつならたぶん教えられるよ」


「あいつって?」









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