大切な人
世界が止まったような気がした。
広田晃輝から口にされた言葉が、あまりにも現実離れしすぎていて。
「記憶…喪失…?」
信じられなかった。晃輝が記憶喪失だなんて。
でも、別人じゃなくて良かったと、心のどこかで思っている自分がいた―――
「でも、どうして記憶喪失に?」
「それは…」
晃輝の話によると、引っ越してすぐ、家族全員で近くの海に出掛けた時、信号無視してきた自動車が突っ込んできて―――
晃輝以外全員が亡くなってしまったらしい。
でも、晃輝は一命をとりとめたものの、思い出などの記憶をすべてなくしてしまった。
そして晃輝は叔母さんの家に住み始め、ある程度のことは思い出したが、小学生までの記憶はまだ戻っていない――――――――