大切な人
連れてこられたのは校舎の裏。





「なんですか…」





うつむきながら聞くと、西野さんは鼻で笑い、壁に手をついた。





「吉澤さんってさぁ、松田くんと付き合ってんの?」





ドキン……





あたしは晃輝が大好きだけど……晃輝は、違う……





「付き合ってはいません。でも…好きです……誰よりも晃輝のことが好きなんです」




小さな声で呟いた。聞こえたかはわからないけれど、これがあたしの気持ちだった。





「は?晃輝?なにそれ~図々しい」





『図々しい』……だよね、あたしは晃輝にとってただの『友達』なのに……。





「ねぇ、吉澤さん」





西野さんがぐいっとあたしの顎を持ち上げ、あたしと目が合う。





「付き合ってないんならさ、これ以上、松田くんのこと、晃輝って呼ばないでくれる?」





「なっ…!どうして!」





あたしが睨むと、西野さんはにっこりと微笑み、一言残して去っていった。






「あたし、松田くん狙いだから」










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