大切な人
あたしの手が神崎君の手に包み込まれていた。






さっきより鼓動が速くて、神崎君に聞こえちゃうんじゃないかってくらいだった。






「吉澤さん」






「な、何……?」






緊張しながらも、神崎君の目をじっと見つめる。






「吉澤さんのこと、彩希って呼んでいいかな?」






「あ、うん!いいよ!」






そんなことか……びっくりしたぁ……






「ありがと。俺のことも神崎君じゃなくて、翔でいいよ。神崎君だとなんか他人行儀っぽいからさ」






「わかった!翔君ね!」






翔……か。翔君にぴったりな名前だと思うな……






「………よし、終わったよ!」






思ったより早く終わってよかった!






「お疲れ様。じゃあ帰ろっか、送ってくよ」






「えっ?いいよ!悪いから!」






「気にしないで。こんな時間に女の子1人で帰らせるわけにはいかないから」






必死に断ったけど、翔君の優しい笑顔には、なんとなく断るのも悪いな、と思ってお願いした。






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