猫と生きる
「吉田直也…」
「なんでフルネーム?ま、いいや…中、入る?」
笑顔で私を部屋に招き入れる吉田直也。
「いや、ちょっと寄っただけだから!」
「そう?ゆっくりしていけばいいのにー。」
吉田直也は残念そうな顔をしている。
早く、お礼言って帰ろう。
「あの、この前はありがとう。」
「この前?あぁ、爆発事件の?」
「うん。…その、助かったわ。」
「いやいや、実際俺は何もしてないし!でもよかったよー、なっつんが無事でさ。」
「……それだけ。それじゃあ…」
私は吉田直也に背を向けた。
ちゃんと言えた…。
私はアパートの敷地から出た。
「なっつん、待って!」
吉田直也の言葉に振り返る。
「今日は来てくれてありがとう。」
「…。」
何も言えなかった。
なんだか恥ずかしくて、私はまた吉田直也に背を向けると、駅の方へ歩き出した。