猫と生きる
「あぁ、アキハくんね。夏樹ちゃんから少し話は聞いてるよ。おいで。」
俺は絹代さんに招かれ家の中に入った。
「あの、雪見さんの様子はどうですか?」
「変わらず眠り続けているよ。」
「そうですか…」
絹代さんは廊下の突き当たりにある扉の前で止まった。
「ここだよ。」
絹代さんは引き戸を開けた。
畳の小さな部屋の真ん中に、彼女は眠っていた。
「雪見さん…」
雪見さんの隣には黒猫が座っていた。
…この黒猫、どこかで見たことあるぞ。
黒猫は俺に気がつくと目を丸くした。
「アキハじゃねーか!」
「お前…ペットショップの!」
思い出した。
この黒猫、ペットショップにいたあいつだ。
女子大生に飼われることを夢見ていたあの黒猫…
爆発事件の時に他の猫たちを先導していたあの黒猫だ。
そうか、あの爆発事件のあと売れたと聞いたが絹代さんの飼い猫になっていたのか。