猫と生きる




「あらあら、知り合い?」


絹代さんは黒猫と俺を交互に見る。


「僕が働いていたペットショップにいた猫なんです。」


「そう。この子はぬーちゃん。あの爆発事件での活躍を見ていた孫が私にプレゼントした子なのよ。」


絹代さんは微笑む。


ぬーちゃん…似合わない。


俺が笑いを堪えていると、ぬーちゃんは不機嫌そうな顔をする。


「笑うんじゃねぇ!」


怒るぬーちゃん。


「ごめん、ごめん。」


そう言ってぬーちゃんの頭を撫でてやる。


そこで、ハッとした。


絹代さんの前で、猫と会話をしてしまつた。


久しぶりの黒猫との再開に、思わず話してしまったが、不審に思われなかっただろうか。


絹代さんの方を見る。


絹代さんは俺を見ていた。


「あなたは猫と話せるのね。」


気味悪がられると思ったが、絹代さんは穏やかな表情をしていた。


「変なことじゃないわ。夏樹ちゃんから聞いたと思うけど、私は猫の見たものを見ることができるし、夏樹ちゃんは猫を引き寄せる。そして…」


絹代さんの視線が、眠っている雪見さんの方へ落とされた。


「この子は猫そのもの。」


猫そのもの…




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