猫と生きる
南さんは、猫と同化した雪見さんが、爆発事件の際、その猫の力を使いすぎたちめ、身体への負担に耐えきれなくなり眠り続けてしまったとも言っていた。
雪見さんの中にいる猫は、どう思っているのだろうか。
彼女を苦しめていることに、何も感じていないのだろうか。
「あの、一つ試してみたいことがあるんですけどいいですか。」
「いいわよ。」
俺は、雪見さんの中にいる猫に話しかけてみることにした。
「聞こえたら返事をしてください。俺は、雪見さんの友人のアキハと言います。」
俺は雪見さんの枕元に座り、話しかけ続けた。
「お願いします。俺の話を聞いてください。」
猫からは何の応答もなかった。
「このままだと、雪見さんが死んでしまいます。お願いします。俺は雪見さんに助けられました。俺は彼女を助けたいんです。」
何度も話しかけた。
しかし、やはり何の返事もない。
相手が猫なら話し合えるかもと思ったが無理だったかと諦めようとしたその時だった。
「あなたにこの子は救えない。」
声がした。
「あなたにこの子は渡さない。」
声は続ける。
「月元アキハ。あなたのせいでこの子は苦しんでる。」
俺のせいで…?
「どういうことですか?」
「あなたはもう答えを知っている。あなたがいる限り、この子は苦しむ。この子は今、死を望んでいるの。邪魔をしないで。」
「俺が、雪見さんが苦しんでいる原因を知っているってことですか?」
「この子を雪見と呼ばないで。この子の名前は雪見日菜子じゃない。」
店長も言っていた。
履歴書に書かれた雪見日菜子は偽名だったと。
「それじゃあ、雪見さんの本当の名前は…」
「あなたは知っているはず。」