猫と生きる
俺とのぶ代さんは市民会館へ向かって歩き始めた。
絹代さんの家を出たあとからずっと俺は雪見さんのことを考えていた。
彼女の本名はどうやら俺が知っているらしい。
でもその本名に俺は全く覚えがない。
そこで、昨日の夜からずっと考えていた。
1番分からないことは、彼女はなぜ偽名を使っていたのか…
彼女が働き始めたのは俺が働き始めたすぐ後だ。
俺が彼女の心の傷の原因になったのは、彼女が働き始めてからだと最初は考えた。
それより前に俺は彼女に会っていないからだ。
しかし、もしかしたら俺は以前にも彼女に会っているのかもしれない。
彼女は俺に本名を知られたくなかったから偽名を使っていたとしたら…?
俺はここに来る前に、一つの答えを導き出していた。
彼女の本名を俺は知っているかもしれない。