猫と生きる
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「みんなー!準備はいいー?!」
勢い良く流れ出す音楽と共に、南さんはステージに立った。
俺たちのいる控え室には小さなモニターがあり、ステージの様子を見ることが出来るようになっている。
南さん、がんばってる。
俺もがんばらなければ。
眠る雪見さんと向き合う。
「お願いします。もう一度、俺の話を聞いてください。」
雪見さんの中の猫に呼びかける。
車椅子の周りの猫たちも一斉に鳴き始める。
すると…
「うるさいぞ。」
雪見さんの中の猫が返事をした。
「無理だって言ったのに、こんなにたくさんの猫を連れてきて…」
「あの…もう一度話を聞いてくれませんか?」
「何度言っても同じ。あなたにこの子は助けられない。この子は死ぬしか救われない。」
「そんなことない。彼女は生きなきゃいけないんだ。」
「なぜ?死んだ方がいいって言ったのはこの子なのに。」
「とにかく、彼女の体から出てきてください。」
「わかった。」
突然、雪見さんの膝の上に猫が現れた。
灰色の、青い瞳の綺麗な猫。