猫と生きる
「どうして、この子の邪魔をするの。」
猫は言った。
「俺は彼女に助けてもらったんです。だから、彼女を助けたいんです。」
「助けてもらった?果たして本当にそうかな。彼女はあなたを助けようとしたのではないかもよ。」
灰色の猫は絹代さんの方を見た。
「そこのあなた。あなたは私の見てきたものを見ることができるね?」
絹代さんが頷くと、灰色の猫は雪見さんの膝の上を降り、絹代さんのそばまで歩み寄った。
「それじゃあ見るといい。私の見てきたものを全て。」
絹代さんは猫を抱き上げ、額を当てる。
しばらくして、猫から額を離した絹代さんは猫を床に下ろした。
「どうだった?」
猫が絹代さんに尋ねた。
「あの、何が見えたんですか?」
俺も絹代さんに尋ねる。
「昔の雪見さんが見えたわ。」
昔の雪見さん…
「これでわかった?この子は生きていても幸せにはなれない。」
猫はそう言って再び雪見さんの膝の上に乗った。
「彼女はずっと1人だった。寂しいんだよ。私と同じで。」
猫が言う。