猫と生きる
俺が辿り着いた雪見さんの本名…
もしこの仮説が正しいなら、俺は雪見さんの幼い頃を知っている。
「俺は…雪見さんの本名を知っています。」
灰色の猫が真っ直ぐに俺を見つめる。
「やっと思い出したの?」
俺は頷く。
この名前が間違いであれば、彼女はもうきっと目を覚まさない。
しかしもしも…もしもこれから俺が言う彼女の名前が本当ならどんなに現実は残酷なんだろう。
さっきの猫の言葉の意味が分かった気がした。
雪見さんは、あの時俺を助けようとしたのではないのかもしれない。
助けようとしたのではなくて、償おうとしたのかもしれない。
それでもいい。
俺はそれでも彼女を助けたいと思うのだ。
彼女に生きていてほしいと思うのだ。
「彼女の本当の名前は…」