猫と生きる
露木冬。
それは彼女の本当の名前。
そして…
「私はアキハ君のお母さんを殺した。」
俺は何の言葉も出なかった。
「私はあれから、この罪を償うために生きてきた。アキハ君を助けるためだけに。そして、やっと目的を達成したの。」
雪見さんは静かに続けた。
「でもね、信じてもらえないかもしれないけど、あの爆発の時私がアキハ君に償いをしようとしたんじゃなくて、本当に助けようと思ったんだよ。」
「信じるよ。雪見さんは…南さんや、その場にいたお客さんも助けたんだから。」
「ありがとう。アキハ君、わたしのこと、本名で呼んでよ。」
「露木さん…」
露木さんは車椅子から立ち上がった。
「私の目的は達成された。だからもう私は生きたくない。」
露木さんが俺を見る。
「私の生きる意味も、目標ももうないんだから。」