猫と生きる
「めーし!めーし!」
「うるさいなー、今やるから。」
キャットフードの入った皿をケースの中に入れる。
いれた途端に顔を皿にぶつけるようにして食べ始める黒猫。
「まぁアキハでもいいんだけどさぁー、どうせなら女の子にエサもらいたいよなー」
エサをもらったくせに文句を言う黒猫。
「悪かったな、俺で。」
「女の子がいいよー。例えば…ほら、あの子!」
顔中にエサをつけて顔を上げた黒猫の視線の先に、小柄な女の子がいた。
白いニット帽を深く被り、俺の方を見ていた。
「あぁ、雪見さん。」
「あの、えっと…アキハ君、お疲れ様です。」
「お疲れ様。」
この女の子は雪見日菜子。
俺と同じ高校三年生で、このペットショップでバイトをしている。
雪見さんはニット帽を取ると、俺にぺこりと頭を下げ、更衣室の方へ消えていった。