猫と生きる
「かわいいよなー日菜子ちゃん」
黒猫が日菜子の後ろ姿を見つめながら言う。
「お前飼い主顔で選ぶから売れないんだよ。」
「うるせぇ、どうせなら可愛い女子大生に飼われたいんだよ。」
「あっそ。」
黒猫のケースの扉を閉じる。
これで最後か。
次は犬のショーケースだが正直犬は苦手だ。
何を考えてるかさっぱりわからないし、急に噛み付くし、ものすごく吠えるし…
犬の餌やトイレシーツの乗った荷台を引きながらショーケースの方へ移動しかけたとき、更衣室から雪見さんが出てきた。
「あ、アキハくん…手伝うよ。」
雪見さんはトイレシーツを何枚か荷台から取り出すと、トイプードルのいるケースを開け、トイレシーツの交換を始めた。
トイプードルは嬉しそうに尻尾を振っている。
「でも、雪見さんレジの方は?」
「いいの、今空いてるし…店長さんもいるから。」
雪見さんはテキパキとトイレシーツを片付け、新しいシーツを敷く。
雪見さんは俺と違って犬に好かれている。
トイプードルは雪見さんが片付けを終えるまで大人しく待っていた。
俺がケースの中に手を入れようものなら全力で噛みつきにくるくせに…