猫と生きる





4月8日。






あれから露木さんが俺の前に現れることはなかった。


彼女は再び姿を消してしまったのだ。


連絡先も知らない俺はどうすることも出来なかった。


やっぱり、彼女は俺と会わないことを選んだのだ。







今日は大学の入学式だ。


入学式を終えた俺たち新入生はガイダンスのために大講堂に集まっていた。


前に貼ってある座席表を見て、席に座る。


座席は出席番号の順のようだ。


しばらくすると、学長らしき人が来て、プリントを配り始めた。


前から回ってきたプリントを受け取り、自分の分を取る。


そして、後ろに回したときだった。









「露木…さん?」









俺の後ろの座席は露木さんだった。


「アキハ君?!」


彼女も俺に気がついていなかったのか驚いている。


露木さんがプリントを受け取り、後ろの人に回す。


「アキハ君…同じ大学だったんだ。しかも、同じ学科…」


「偶然だね。」


「うん、こんなところで会えると思わなかった…」














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