猫と生きる





8月3日。






今日は公園に透さんはいなかった。




1人でベンチに座り、夏休みではしゃぐ子供たちをぼうっと見ていた。


すると、足元で「にゃー」と、鳴き声がした。


声のする方を見ると、灰色に青い目をした子猫がいた。

あのときの猫にそっくりだった。

でもあの子はもういないのだ。

おそらく似た猫なのだろう。



撫でようとすると、私の手をするりとすり抜け、その猫は「にゃ」と一声鳴いた。

そして私は不思議な体験をしたのだ。

その猫の一声、なんと言っているのか私にはなんとなくわかったのだ。

気のせいかもしれないが、猫と意思が疎通した気がしたのだ。



その猫は言った。

「あの人が危ない。」と。

あの人とは誰だろうか…



もし、この猫があのときの猫の魂だとでも言うのなら、あの人とは透さんのことではないか?

透さんに何か危険が迫っているような気がして、私は落ち着かなかった。




ただの気のせいならいいのだが。






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