猫と生きる
「あ、そろそろ休憩終わりだよ。」
雪見さんが休憩室の時計を指差して言う。
「そうだね、行こうか。」
俺が休憩室のドアノブに手を掛けた時だった。
「吉田くんいる?!」
店長が休憩室に入ってきた。
ドアで鼻をぶつけた俺はさすりながら答える。
「吉田さんならいないですよ。」
「いない?なんで?」
ただでさえ幸の薄そうな顏の店長がさらに幸の薄そうな顏になっている。
「何かあったんですか?」
「爬虫類の売り場の方が混んできて…そろそろ休憩終わりのはずなのに吉田くん戻ってこないから見に来たんだよ。」
「……。」
俺と雪見さんは顔を見合わせる。
「吉田さん、体調崩したみたいで…さっき帰りましたよ。」
雪見さんがフォローを入れる。
優しいな、俺だったらもうアイドル見に行ったって言っちゃうのに。
「そうなの?…困ったなー、僕は犬•猫のレジのほうで手が離せないし…」
「それなら俺が吉田さんの代わりやりますよ。何回か代わりにやったことありますし。」
吉田さんが突然仕事をサボって消えるのは実はこれが初めてじゃない。
その度俺が仕事を代わっていた。
「そうかい?ごめんねー、いつも月元くんばっかり…」
「いいですよ。」