猫と生きる
「おまえはさー、」
ある日、その猫は俺に尋ねた。
「カイヌシがすきか?」
俺にぬーちゃんと不本意な名前をつけたばーさんの顔が思い浮かぶ。
たしかに、名前の件に関しては未だに根に持っているが、べつにばーさんのことが嫌いではない。
むしろばーさんと過ごす今が好きだ。
あんなにも女子大生に飼われたいと思っていたのに、不思議だ。
そう答えるとその猫はゴロゴロと転がりながら満足そうに頷く。
「わたしもカイヌシがすき。」
「そうか。よかったな。」
「うん。でも、だからたまにかんがえるんだー。」
「なにを?」
「ねこのいのちは、ヒトよりもみじかい。だから、わたしはどんなにあのひとといっしょにいたくても、すぐにわかれのときがきてしまう。」
そんなこと、考えたこともなかった。
そうか、俺が死んだらもうばーさんには会えない。
「わたしはねー、ながくいきたい。ヒトみたいに、なんじゅうねんもいきたいよ。」
「そう、だな。」
そこで、その話は終わった。