猫と生きる




私のお父さんとお母さんはとても仲のいい夫婦でした。


もう一度言います。


仲のいい夫婦でした。


…でした。


そう、過去形なのです。






最近、お父さんは家に帰るのが遅くなりました。


帰って来ない日もあります。


帰ってきても、お母さんと喧嘩してばかり。


お母さんはお父さんのいない時はいつも泣いています。


「どうしたの?」と私が尋ねても、お母さんはいつもなんでもないしか言いません。


なんでもないわけないのに。


どうやらお母さんは私に隠し事をしているようでした。




私の家が見えて来ました。


近所からはかわいいと評判のクリーム色に赤茶の屋根の自慢のお家。


お母さんがガーデニングが好きなので、お庭もとてもきれいでした。


…でした。


もちろん、これも過去形です。


そのお家に入ろうと、玄関のドアまでの小さな階段を登りかけたときでした。


「…あ。」


私の家は、住宅街の中のちょうどT字路の角にあるのですが、そのT字路を挟んで斜め前の家に、私と同じ年の男の子が住んでいます。


T字路を挟んで学区が違うので、残念ながら学校は別で、名前も知らない男の子です。


その男の子がちょうど私と反対の方角から家に向かって歩いていました。







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