猫と生きる
ここからは、またいつもの日常です。
朝は少し変なことがありましたが、こんなことで私の日常は変わりません。
あの男の子のことを考えながら、ぼんやりと授業を聞き、給食を食べて、またぼんやりと授業を聞き…
そして下校。
憂鬱です。
家に帰りたくない。
お父さんのこともお母さんのことも嫌いではないのに、会いたくないのです。
私は家の玄関の前で立ち止まります。
家に、入りたくない。
またきっと、お母さんは泣いているし、お父さんは帰ってこない。
帰ってきてもケンカになるだけ。
私はそれが終わるのを耳を塞いで、目を閉じて、寝ているふりをしながら待つのです。
もう嫌だ。
「なにしてるの?」
驚きのあまり何も声が出ませんでした。
「家、入らないの?」
ゆっくりと顔を後ろへ向けると、あの男の子が私の後ろで不思議そうに私を見つめていました。
「え…えっと…」
「わかった、家の鍵なくしちゃったとか?」
「いや…あの…」
どうしよう。
私の心臓は破裂寸前でした。
絶対話せないと思っていた、関われないと思っていた男の子が、今私に話しかけています。
「あの…大丈夫だから!」
それだけ言ってわたしは逃げるように家の中に入りました。
実際、喋ることから逃げてしまったのですが。