猫と生きる
何かいいことでもあったのでしょうか。
お父さんと仲直りしたとか。
お母さんはソファーを立ち、私に朝ごはんを出してくれました。
トーストに目玉焼き、それからサラダ。
お母さんはにこにこしながら朝ごはんを食べる私を向かいの席で見ています。
「お母さん、何かいいことあったの?」
「ううん、何にもない。」
「じゃあどうしてそんなに嬉しそうなの?」
「私、今嬉しそう?」
お母さんは笑顔のままで私に訪ねました。
私はコクリと頷きました。
「そう…。」
お母さんは立ち上がりました。
「あのね、冬。お父さんはね、もう帰って来ないの。」
お母さんはどこを見るでもなく、誰に言うでもなく、そう言いました。
「お父さんはね、帰って来ないの。誰のせいか知ってる…?」
まるで独り言のように、お母さんは私に尋ねます。
目は私の方を向いていましたが、私のことは見ていないような気がしました。
「誰のせいなの?」
私は恐る恐る訊きました。
「あのね…」