猫と生きる
お母さんは教えてくれました。
お父さんがお母さんとケンカをして、そして出て行ってしまった原因となった人のことを。
「斜め前のお家の人よ。」
「斜め前…?」
あの男の子の顔が浮かびました。
「冬が昨日話していた男の子いたでしょ?その男の子のお母さん。」
「え…」
あの男の子のお母さん?
「冬、あの男の子の友達なの?昨日外から人の声がしたから、窓から見てみたの。そしたら冬があの男の子と話していて…」
「違うよ!」
とっさに私はそう答えました。
肯定したらお母さんを裏切ってしまうような気がしたからです。
「そうなの?それならよかった。あの女はね、悪魔みたいなやつなの。私たちからお父さんを奪おうとしたのよ。」
お母さんの様子が変です。
違う人みたいで…
「だからね、その息子のあの男の子も悪魔なの。冬は仲良くしちゃだめよ。」
「う、うん。」
お母さんは立ち上がり、台所の方へ向かいました。
「でもね、冬はまだ子供だからわからないと思うの。お母さん、冬を守りたい。」
お母さんが何かを手に持って、私の前に戻って来ました。
「冬が、悪魔にならないように。」
お母さんが手に持っていたのは包丁でした。
殺される。
そう思いました。