猫と生きる
「冬は、私が守るから。」
お母さんはゆっくりと私の方へ近づいて来ます。
私はリビングを飛び出し、二階の自分の部屋へ駆け込みました。
「冬ー?どうして逃げるの?」
お母さんの声がします。
階段を上がってくる音がしていました。
私は自分の部屋のドアを閉め、すぐに鍵を掛けました。
「冬ー?」
お母さんの声がすぐ扉ごしにしています。
どうして。
どうしてこんなことに。
私は布団に包まりました。
お母さんはドンドンと扉を叩いています。
音は段々と激しくなります。
扉が壊されるのは時間の問題でしょう。
私は布団の中で震えることしかできません。
無力です。
誰も助けてはくれません。
逃げるにもこの部屋の出口はお母さんのいるこの扉だけ。
窓から逃げようにも、ここは二階です。
飛び降りて運が悪ければ死んでしまうし、運良く助かっても怪我をして動けなくなるでしょう。
そうなったら、お母さんに殺されてしまう。
私はどう足掻いても死ぬしかないのでしょうか。
思えば、私の人生ってなんだったのでしょうか。
そもそも、私はここで生き残ったとして、何か価値のある人間なのでしょうか。
私に生きる意味などあるのでしょうか。
だったら、今ここで死んでも…