猫と生きる
お母さんは床に倒れていました。
床には赤い液体が広がっています。
私はうつ伏せになっているお母さんを仰向けにしました。
「お母さん…」
お母さんは、あの男の子のお母さんのように、お腹に包丁が刺さっていました。
「冬…」
「お母さん?」
「ごめんね、冬…」
お母さんはそれだけ言うと、それからは何も喋らなくなりました。
それからのことはあまりよく覚えていません。
たくさん泣いたことは覚えています。
気がついたら、警察の人が来ていて、私は警察の人たちに連れられて、たくさん話を聞かれました。
私は、素直に全て話しました。
警察署で、あの男の子に会いました。
すごく泣いていました。
どうして…
彼は喜んでくれると思ったのに。
私が彼を悲しませたのでしょうか。
返して、返して…
男の子はずっとそう言っていました。
私が奪った。
私の勝手な勘違いと、勝手な正義感が、彼を深く傷つけた。
やっと私は気がつきました。