猫と生きる
本当はアイドルになんてなりたくなかった。
そりゃ、確かに少し憧れたりはしたけれど、ちょっとなってもいいかななんて思ったりもしたけれど。
実際なってみたらいいことなんて一つもない。
休日はない、どこへ出掛けてもファンに追い回される、ストーカーに遭う。
特に1番私にとって厄介なのはあの男。
吉田直也
彼は私がデビューしてまだ間もないころから私の全てのライブやイベントに参加しているファンの一人だ。
初めて彼に会ったのは1年程前。
私の初めてのライブだった。
ショッピングセンターでの小さなライブだった。
当時無名だった私のライブをわざわざ立ち止まって見てくれるような客も少なく、いざステージに立つとその人の少なさに愕然とした。
スカウトされてアイドルになったはいいが、こんなんで私は大丈夫なんだろうかと思った。
それくらい、人が少なかったのだ。